Date2026.04.30

作業着・現場ユニフォームの新常識|安全性、暑熱対策、企業価値を両立する2025年の制服設計

作業着現場ユニフォームの新常識安全性、暑熱対策、企業価値を両立する制服設計

作業着や現場ユニフォームというと、今もなお「汚れてもよい服」「安全であれば十分な服」という見方が残っています。もちろん安全性は大前提です。しかし2025年の市場動向と企業事例を見れば、それだけでは不十分であることは明らかです。いま現場のユニフォームに求められているのは、安全性、機能性、暑熱対策、企業らしさ、そして着る人の誇りを一つの設計の中で両立させることです。現場に立つ人の服をどう考えるかは、結局のところ、その企業が現場をどう位置づけているかの表明でもあります。

まず押さえておきたいのが、市場全体の変化です。矢野経済研究所は、2025年度の国内ユニフォーム市場規模を前年度比102.7%の5,670億円と予測し、その背景として夏の酷暑化、ファン付ウェアなど高単価商品の需要拡大を挙げています。さらに同研究所は、2025年6月の労働安全衛生規則改正により、職場における熱中症予防対策が義務化されたことが、暑熱対策製品の需要増加を後押しすると指摘しています。これは、現場服が単なる被服費ではなく、法令対応・労務管理・安全配慮義務と密接につながる投資対象になっていることを意味します。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/4016

こうした背景のなかで、2025年に動いた企業の事例は非常に興味深いものがあります。たとえば日本ヒュームは、創立100周年を機に作業服を約30年ぶりに全面リニューアルしたと発表しました。若手社員を中心としたプロジェクトチームが主導し、工場や技術工事など全部門で試着とヒアリングを行い、約半年をかけて完成させたとしています。新作業服はミズノ社製で、ライトグレーをベースにネイビーを配したスタイリッシュなデザインとされ、安全性・作業性にも十分配慮したと説明されています。ここで注目したいのは、100周年の節目に「歴史を語る記念品」としてではなく、「これからの100年を担う現場の装い」として作業服を再定義している点です。
https://www.nipponhume.co.jp/ir/pdf/20250714.pdf

伊藤組土建もまた、2025年10月から新ユニフォームを導入し、ミズノと共同で企画・製作したと発表しています。同社は、中期経営計画の目標である「働きやすく、やりがいのある会社」を目指すなかで、今回のリニューアルを社員の意見を反映した働きやすい職場環境づくりに向けた人的資本投資の一環と位置づけています。作業着が人的資本投資として語られていることは、非常に重要です。つまり、作業服は単なるコストではなく、現場で働く人の価値を守り、高めるための基盤として認識されはじめているのです。
https://www.itogumi.co.jp/news/detail.php?eid=00404

2025年には、作業着とデザインの関係も変わりました。フジテックのユニホーム改革がグッドデザイン賞で評価されたことは、その象徴といえます。評価コメントでは、機能性や快適性だけでなく、ジェンダーフリー設計、マタニティ対応、ケミカルリサイクルの仕組みまでが言及されました。これは、「現場服にデザインは贅沢」という古い考え方が、すでに通用しないことを示しています。いま求められるデザインとは、飾るための見た目ではなく、現場の人が前向きに働くための設計であり、企業の思想を外部に伝えるための言語でもあります。
https://www.fujitec.co.jp/corporate/csr/contribution/18271

さらに、乃村工藝社の事例も示唆に富んでいます。同社は2025年、主に施工現場を管理する社員向けユニフォームを約10年ぶりにフルモデルチェンジし、ユニクロのオリジナルデザインを採用しました。発表では、気候変動や人財の多様化、働き方の変化への対応を背景に挙げ、旧作業着の一部を回収後に内装材としてアップサイクルするとしています。現場の服においてさえ、機能性だけでなく、環境配慮やクリエイティビティまで含めて考える時代に入ったということです。
https://www.nomurakougei.co.jp/news/page/7348/

現場ユニフォームを考えるうえで、WANSIE UNIFORMが特に重視しているのは、「安全」と「誇り」を分けないことです。安全性を優先するあまり、着る人の気持ちが置き去りになってしまう服は、長期的には良いユニフォームになりません。逆に、見た目だけを優先して現場の動きを妨げる服も論外です。必要なのは、現場のリアルな動線と作業内容を理解したうえで、暑さ、寒さ、屈伸、収納、洗濯頻度、視認性、耐久性といった条件を整理し、それでもなお企業らしさがにじむ一着をつくることです。たとえば色の切り替え一つでも、汚れの目立ちにくさとブランドカラーの両立は可能です。シルエットやパーツの選び方一つでも、現場らしさを保ちながら野暮ったさを回避することはできます。

また、暑熱対策がより重要になるこれからの時代、素材やレイヤリングの設計も欠かせません。すべてをファン付ウェアにすれば解決するわけではなく、現場の職種や作業時間、屋内外の移動、見た目の印象、メンテナンス性まで含めて最適化する必要があります。現場によっては、見た目の統一感を保ちつつインナーやベストで温度調整しやすくするほうが有効な場合もあります。あるいは、夏場と中間期で着方を変えられる設計が結果的に運用しやすいこともあります。ここでも重要なのは、カタログから選ぶことではなく、自社の現場に合った運用まで含めて設計することです。

作業着は、社外の人にも見られています。施工現場で取引先に会うとき、搬入先で挨拶するとき、現場近隣の人の目に触れるとき、その会社の第一印象になるのは、実は営業資料ではなく現場スタッフの装いだったりします。だからこそ、現場ユニフォームは安全対策であると同時に、営業力でもあり、採用力でもあり、企業ブランディングでもあります。2025年の先進事例は、そのことをすでに証明しています。
https://www.itogumi.co.jp/news/detail.php?eid=00404

もしいま、作業着の見直しを「まだ先でいい」と考えているなら、一度立ち止まってほしいと思います。暑さは年々厳しくなり、人材確保はさらに難しくなり、企業に求められる安全配慮と説明責任は重くなっています。そんな時代に、現場の装いを後回しにすることは、現場の価値を後回しにすることに近いのかもしれません。現場で働く人が、安心して、快適に、誇りを持って着られる一着を持つこと。それは企業の足元を整えることです。そして、足元が整った企業ほど、強く、長く、信頼されていくのだと私たちは考えています。