1. はじめに:
観光列車や観光バスのような移動型サービスは、地域資源を外部に発信する絶好の舞台です。列車内の食事やインテリアだけでなく、スタッフが身にまとう制服もまた、強力なブランド発信ツールとなります。本記事では、福岡県筑後エリアを走る西鉄の観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の事例を取り上げ、久留米絣という地域の伝統素材を制服に取り入れることで、地域貢献とブランド価値向上を同時に実現したプロセスを詳しく解説します。
2. 列車の概要とコンセプト
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、福岡市と大牟田市を結ぶ西鉄天神大牟田線を走る観光列車です。コンセプトは“地元・九州の食と文化を車内で楽しむ”。列車の内装や提供される料理はすべて九州各地の素材や作家によって構成されており、移動そのものが地域文化体験となるようデザインされています。(参考:西鉄公式プレスリリース https://www.nishitetsu.jp/ja/news/news-005208.html )
3. 制服に久留米絣を採用した背景
久留米絣は、福岡県久留米市周辺で200年以上続く伝統的な綿織物で、独特の「にじみ柄」が特徴です。耐久性と通気性に優れ、かつ軽やかな着心地は、長時間の接客や移動を伴う業務に適しています。列車では、この久留米絣をシャツやベストに取り入れ、地域色と機能性の両立を図りました。
制服制作は、地域の仕立て屋や織元と連携。反物は八女市の工房から調達され、仕立てはみやま市の職人が担当するなど、工程全体を地域内で完結させています。これにより、制作段階から地域経済への波及効果を生み出しました。(参考:下川織物公式サイト https://kurumekasuri.jp/ )
4. 制服デザインの特徴
シャツ・ベスト構成
ベースは白シャツで清潔感を保ちつつ、ベストやエプロン部分に久留米絣を配置。柄は複数パターンを用意し、シーズンごとに入れ替えることで新鮮さを保ちます。
機能性素材との組み合わせ
裏地や見えない部分には吸汗速乾素材を採用。見た目は伝統工芸、着心地は最新機能という二層構造です。
アクセントカラー
車内インテリアの色調と合わせ、小物や帯に赤や黄色を差し色として使用。写真映えとブランド統一感を両立させています。
(参考:THE RAIL KITCHEN CHIKUGO公式サイト https://www.railkitchen.jp/ )
5. 地域貢献の効果
産地PR効果
久留米絣を着たスタッフが全国各地からの旅行者と接することで、自然と産地の魅力が伝わります。「これはどこで作られているのですか?」という会話が生まれ、観光案内にもつながります。
継続的需要の創出
制服は消耗品であり、定期的な新調や補充が必要です。これにより、織元や仕立て屋への継続発注が確保されます。
観光と購買の連動
列車内や駅構内で久留米絣製品を販売することで、乗車体験から直接購買行動へつなげられます。
(参考:久留米観光コンベンション国際交流協会 https://www.kurume-hotomeki.jp/ )
6. ブランドイメージ向上の仕組み
久留米絣の模様や質感は、視覚的に強い印象を残します。制服と料理の器、車内装飾に一貫して地域素材を使用することで、ブランド全体の統一感が高まり、「地域の魅力を丸ごと楽しめる列車」という認識が広がります。
さらに、SNSでの乗車写真や動画にスタッフの制服が映ることで、無意識に久留米絣が拡散され、オンライン上でも地域ブランディングが進みます。
7. 導入後の変化
制服刷新後、旅行口コミサイトやSNSで「スタッフの制服が素敵」「列車の雰囲気に合っている」といったコメントが増加しました。特に外国人旅行者からは「日本らしい伝統を感じられた」という声が多く寄せられています。
(参考:トリップアドバイザー THE RAIL KITCHEN CHIKUGO口コミページ https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298207-d17283527-Reviews-The_Rail_Kitchen_Chikugo-Fukuoka_Fukuoka_Prefecture_Kyushu.html )
8. WANSIE UNIFORMができること
地域サプライチェーンの構築
素材調達から縫製、メンテナンスまでを地域内で完結させ、経済波及効果を最大化します。
運用面での耐久性・機能性確保
観光や接客業務に適した素材選びと仕様設計を行い、長期間快適に使用できるようにします。
ストーリーマーケティング
制服の背景や制作過程を社内外に発信し、ブランド物語として活用します。
9. KPI例
- ・制服や地域素材に関する口コミ件数
- ・制服関連SNS投稿の反響
- ・産地製品の販売数(列車内やオンラインショップ)
- ・地域工房との取引継続年数と発注額
10. まとめ
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の事例は、制服が単なる業務着ではなく、地域資源を全国に発信する“移動する広告塔”であることを示しています。久留米絣を身にまとったスタッフは、地域文化の案内人であり、列車自体が地域ブランドの象徴です。この手法は他の観光事業や商業施設にも応用可能で、地域経済とブランド価値の両立を目指す企業にとって参考になるモデルケースです。